深田 上 免田 岡原 須恵

ヨケマン談義7. 人吉球磨地方の自然

7-10. ふるさとの野鳥

 ふるさと探訪で忘れていたこと、それはふるさとの野鳥のことです。メジロなどは説明する必要はありませんが、皆さんは「アサヒキ」とか「ムクギ」をご存じですか?
写真左:「カワラヒワ(河原鶸)」を球磨地方では「アサヒキ」と言っていました。写真右:「イカル(鵤)」は球磨地方では「ムクギ」と言っていました。

カワラヒワ イカル
カワラヒワ(日本野鳥識別図鑑) イカル(ひがし北海道の野鳥図鑑)

 アサヒキやムクギは「藁ツト」を使って捕えていました。「ツト」は藁で編み両端を縛って舟形のようにして、その中に餌となる穀物を入れ、 ツトの縁には馬の尻尾の毛で作った輪っぱを結んでおくのです。
すると、野鳥が足や首を輪の中に入れてしまい、飛び立つことができずぶら下がるのです。
縛られているのが足だと取り込みを急ぐことはないのですが、輪っぱが鳥の首に掛かっている場合は、急いで捕獲しないと死んでしまいます。
ツトは高い柿木に掛けて置きましたから取り込みも大変でした。こどもの頃、そうやって捕えたアサヒキやムクギを飼いならしていました。
 皆さんには似たような経験、おありですか? 

 小学生時代に 「トリモチ」(赤い実がなるモチノキの樹皮を剥いで、近くの川で石で細かく打ち砕いて、ネバネバにしたものを棒に巻き付けたもの) とカスミ網を持って、数人で山に入り、メジロを採りに行ったことが記憶が有ります。
捕らえたメジロは予め作ってあった竹籠(近所に一回りも年上の方で、竹籠を作る名人が居られて、 小学校からの帰宅途中で寄り道して、見よう見まねで作りました)で飼っていましたが、 メジロは益鳥で自宅で飼ってはならないってことを知ったのはその後のこと。 良き昭和の思い出。(関西会 Y.Tさん 75歳)


 私は、トリ餅を使わないで「オトシ籠」を使ってメジロを捕獲していました。
オトシ籠というのは、籠の中が二段になっている二階建ての鳥籠のことです。上の段に扉がついており、メジロが縄張り争いために近寄ってきたり、 繁殖相手にアプローチするためにて近づいて籠の二階に止り、桟(さん)を踏むと扉が閉まって捕獲できるようにしたものです。
この「オトシ籠」も自分で作っていました。竹を割り、丸い竹ひごに削り、柱には錐(きり)で穴を等間隔にあけるのですが、これが厄介でした。 不揃いだと竹ひごが等間隔にならず歪(いびつ)な籠になってしまうのです。
YTさんご指摘のように、メジロ捕獲が自由な時代の話です。(中部会 J.Sさん 89際)


カワラヒワ(河原鶸)のことを、熊本県の球磨地方では「アサヒキ」と言っていました。
また、イカル(鵤)は球磨地方では「ムクギ」と言っていました。
とCopilotに質問をすると、以下の応答が有りました。

面白い呼び名ですね。地域の鳥の方言名には、その土地の暮らしや自然観がにじむので、とても味わい深いです。
 🔸「アサヒキ」という呼び名の背景
 球磨地方でカワラヒワを「アサヒキ」と呼ぶというのは、全国的にもあまり知られていない貴重な呼び名です。
 いくつかの可能性を挙げると、こんな解釈が考えられます。
 1. 「朝引き」=朝に鳴く鳥
   カワラヒワは早朝によく鳴く鳥として知られています。そのため、
   • 朝に鳴き声がよく聞こえる • 朝に群れで飛び立つ
 2. 「朝挽き」=田畑に来るタイミング
   カワラヒワは雑穀や草の種を好むため、昔の農村では
   朝、田畑に降りてくる鳥 として意識されていたかもしれません。
 3. 鳴き声の特徴からの連想
   カワラヒワの「キリリリ…」「ビーン」という独特の声を、
  地域の人が「朝に響く声」と感じて名付けた可能性もあります。

  九州南部では語頭の母音が変化したり、「ヒキ」「ヒケ」などの語尾が鳥名に付くことがあるため、その地域的な音感から生まれた名前の可能性。
  球磨地方は古い方言がよく残る地域なので、こうした独自の鳥名が生まれやすい土地柄でもあります。
 カワラヒワの地方名は全国的にも多く、身近な鳥なので、全国でさまざまな呼び名がありますが、「アサヒキ」はその中でもかなり珍しい部類で、地域性が強くて魅力的です。

 「ムクギ」もまた、球磨地方らしさがにじむ、とても興味深い呼び名ですね。
こういう地域固有の鳥名は、自然との距離が近かった時代の記憶がそのまま残っているので、聞くだけで風景が立ち上がってきます。

 イカルを「ムクギ」と呼ぶ理由を考える。
イカル(鵤)は全国的にも地方名が多い鳥ですが、「ムクギ」はかなり珍しい部類です。語源として考えられる方向性はいくつかあります。
  1. 「ムクノキ(椋木)」との関係
   イカルはムクノキの実を好んで食べることで知られています。
   そのため、「ムク(椋)」+「食う(クウ)」→「ムクギ」
   「ムクの木に来る鳥」→「ムクギ」といった連想から生まれた可能性があります。
 九州南部では、木の名前と鳥の名前が結びつく例が他にもあるので、これは十分あり得る説です。
  2. 「ムクドリ」との混同・連想
 イカルは体型がずんぐりしていて、遠目にはムクドリに似て見えることがあります。「ムク(ムクドリのムク)」+「ギ(鳥名語尾)」という音感から「ムクギ」になった可能性。
鳥の地方名では、似た鳥の名前が混ざることはよくあります。
  3. 球磨方言の音感から生まれた固有名
  球磨地方の方言は古層が濃く、語尾に「ギ」「キ」がつく鳥名が散見されます。そのため、地域的な音のクセから自然に「ムクギ」という形が定着した可能性もあります。
球磨地方の鳥名は文化資料としても貴重
「アサヒキ」「ムクギ」と続けて聞くと、球磨地方にはまだまだ独自の鳥名が眠っていそうですね。こうした呼び名は、文献に残らないことも多く、地域の人の記憶が唯一の資料になることがあります。


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