11-6. 「芋がら」の煮付け
「芋がら」の煮物、和え物、酢の物が懐かしか!というのは水上村の新藤さんである。
「芋がら」とは、サトイモなどの茎の皮を剥いて乾燥させたものであるが、乾燥する前の生の状態でも「芋がら」と呼ばれる地域がある。一般には芋茎(ずいき)であり、ヤツガシラなど赤い茎の「赤ずいき」、青い茎の「青ずいき」などがある。生でも皮をむき、灰汁を抜けば汁物の具として使えるが、通常は、乾燥させた「芋がら」を戻して、家庭の惣菜に利用されることが多い。
「芋がら」は貯蔵に耐え、保存食になる逸話が熊本にはある。それは、加藤清正が初期の熊本城の築城に際して、篭城(ろうじょう)もありうることを予見し、本来は藁(わら)を使う畳床や土壁に「芋がら」用いたという話である。
籠城が長引き、食料が枯渇したとき、畳床や壁土に混ぜ込めた芋がら を取り出し食べて凌ぐというわけである。
ちなみに、細川藩が徳川将軍家へ献上し、大奥で使われたとされる熊本土産?の「肥後ずいき」は、ハスイモの食用芋茎を干したものである。
サトイモの青い茎 | ヤツガシラの赤い茎 | 芋がら | |
図1. サトイモと芋がら(ずいき)と「芋がら煮付け」 |
図1の右端は、NHKきょうの料理で紹介の「芋がら煮付け」である。芋がらを戻して水を切り、フライパンに油をひいて炒め、醤油、砂糖、みりんを加えて味つけしたものである。この他、芋がら 入りの味噌汁、かす汁、納豆汁、それに芋がら の甘酢漬けや甘酢かけ酢の物、芋がらの食べ方は多彩である。