深田 上 免田 岡原 須恵

ヨケマン談義11. 昔懐かしふるさとの味

11-31. ふつ餅(よもぎ餅)・ぼた餅

 「ふつ」とは、福岡県や熊本県では「ヨモギ」のことである。万葉集にもヨモギの出ている歌が一首だけある。大伴家持の「・・蓬(よもぎ)を縵(かずら)にして酒宴・・」という長歌で、ヨモギを頭に乗せて飾り酒宴をしたというものである。ヨモギは、キク科の多年草で、日本全国いたるところに自生している。 別名、「モチグサ:餅草」ともいうから、「ふつ餅」も昔からつかれ、食べられていたのだろう。

 福岡県南部の太宰府や熊本県北部の山鹿あたりでは、ふつ餅(よもぎ餅)が有名で、そこらあたりに旅行するときは、必ず買い求めるというのは錦町の近藤さんである。太宰府天満宮のふつ餅「よもぎの梅が枝餅」、山鹿市ふつ餅:「よもぎ団子」は有名である。

ふつ餅 ぼた餅 きな粉餅
図1. ふつ餅 図2. ぼた餅 図3. きな粉餅

 図1は、そのような有名店で売られているようなものではなく、どこの家庭でも作ってもらったことのある「ふつ餅」である。「ぼた餅」も、「きな粉餅」も昔懐かしい!と言われる神戸在住の英典さんのために、それらを図2図3に示した。
この「ぼた餅」であるが、中身や味は同じなのに、ボタンの花咲く春は「ぼた餅」、萩の花咲く秋は「おはぎ」。こし餡は「ぼた餅」で、つぶ 餡は「おはぎ」などと指摘されているが、筆者は、ぼた餅がボタンの花に似ているとか、おはぎが萩の花に似ているとはどうしても思えない。関西在住のMさんも、昔懐かしいのは「おはぎ」というより、もち米のおにぎりを小豆の餡子で包んだ「ぼた餅」だったという。

 この「ぼたもち」を町おこしのキャッチフレーズにしている町がある。八代市の坂本町である。そこの坂本駅は肥薩線の特急「かわせみ・やませみ」が八代の次に停車する駅で、葉木、鎌瀬駅を過ぎた所が有名な球磨川第一橋梁である。この町で毎年11月に行われる「坂本ふるさとまつり」のサブタイトルは「ぼたもちと自然の恵み」であった。ここの「名物ぼたもち」を図4に示すが、一見、きな 粉餅風に見えて何の変哲もないようである。しかし、作り方は、炊いた餅米にカライモを入れて「ねったくり」、それを皮にして粒あん を包み込み、きな 粉をまぶしたものだそうである。
まつり当日は即売され、販売所の前には、図右端のような行列ができるそうである。坂本町出身で現在、岐阜にお住まいの本村英輔さんから次のようなぼた 餅便りをいただいた。

坂本 ボタ餅 ボタ餅への列
図4。八代市坂本町の「ぼたもち」祭り

 私が育った八代市坂本町では、ご存知の事と思いますが、「ぼたもち」が有名です。坂本駅にも「ぼたもちの町・坂本」のポスターが掲示されています。毎年秋坂本駅周辺で開催されるふるさと祭りでは、すぐに売り切れになる人気商品だそうです。昨年末100歳で他界した母親がよく作って食べさせてくれたものです。作り方は、地区により流儀があるようですが、我が家では、「もち米・サツマイモ・ヨモギを蒸したものを一緒に臼でついて、餅にして外側をあんこや、きな粉でくるんでいました。サツマイモの甘味とヨモギの風味でとても、美味しかったです。こちらでは、おはぎのことを「ぼたもち」と呼ぶところもありますが坂本では、「ぼたもち」と「おはぎ」とは別物です」。

 この「ぼたもち」と「おはぎ」の違いについて、後日、また、次のようなお便りをいただいた。 「ぼたもちとおはぎの違いは、坂本町では、「ぼたもち」はもち米・サツマイモ・ヨモギを蒸した物を臼でついて餅にします。「おはぎ」は、もち米を炊き、炊きあがったものをすり鉢等に移して米粒が残る程度に潰します。要するに、もち米を蒸すか炊くか、またはつくかつぶすかの違いだと思います。詳しくは分かりません、もっぱら食べることが優先でしたので……」。


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