10-2. 葉タバコ
今回は、葉タバコ、タバコの話である。葉タバコのJT(日本たばこ産業株式会社)への販売実績は、「全国たばこ耕作組合中央会」のHPで見ることが出来ます。例えば、平成19年(2007年)のデータを見ると、1位は熊本県(4191トン)、2位は宮崎県(3805トン)、3位は青森県(3676トン)、4位は岩手県(3674トン)、5位は鹿児島県(2705トン)と、九州は葉タバコ王国であった。
一方、昨年平成30年(2018年)は、1位は熊本県(2664トン)で、2位は沖縄県(2097トン)、3位は青森県(1944トン)、4位は岩手県(1868トン)、5位は宮崎県(1340トン)と嫌煙・禁煙ブームと相まって、耕作面積と生産量が大きく減ってきているのが実情である。
中でも、あさぎり町の葉タバコ生産量は県下でナンバーワン、全国でも5番目である。ちなみに、1位は沖縄の宮古市、2位は岩手県の二戸市、3位は宮崎市、4位は長崎県の南島原市である。実は、球磨郡あさぎり町の筆者の生家も葉タバコを作っている。図1は、朝霧に包まれた幼苗の葉タバコが成長し、収穫期を迎えたあさぎり町の風景である。
図1。葉タバコと収穫風景(あさぎり町HPから) |
タバコ葉には成分として、有毒で習慣性の強いニコチンが含まれている。タバコに含まれる有害物質によって引き起こされる様々な病気は、うつ病・心筋梗塞・動脈硬化・高血圧・糖尿病・メタボリックシンドローム・胃がん・骨粗しょう症・脳卒中・食道がん・喘息・肺がん・肺炎・子宮頸がん・乳幼児突然死症候群 ・ ・ 数えきれないほどである。ついに、2016年、厚労省の研究班は「受動喫煙で年間1。5万人死亡」と報告した。故事ことわざに「百害あって一利なし」というのがあり、タバコがその接頭語となり、「タバコは百害あって一利無し」といわれ、禁煙とか嫌煙とか喫煙者にとっては肩身の狭い時代となっている。タバコは本当に「一利」もないのだろうか?
1966年、JT(日本たばこ産業株式会社)やたばこ生産組合を安堵させるような研究報告がなされた。それは、アメリカの Kahn と Hammond という人の研究成果で、喫煙によりパーキンソン症状の改善が認められ、喫煙率とパーキンソン病の発生率に負の相関があるというものである。この報告をもとに、1968年には、同じアメリカのNefzgerという研究者らが、初めてパーキンソン病患者の喫煙率を検討した。その結果、パーキンソン病患者において喫煙率が低いことが示され、彼ら二人の研究成果が追認された。わが国でもこの結果について、新潟大学脳研究所神経内科や1986年に設立された公益財団法人の喫煙科学研究財団の研究においても、ニコチンが神経伝達物質のドパミン神経を活性化する作用をもつことをいくつかの実験で追認された。パーキンソン病というのは、50歳 代後半を発症のピークとし、手足の震えや硬直、動きにくさ、姿勢保持や歩行の障害などを主な症状とする原因不明の神経変性疾患である。